博士が企業で働く

申請しない理由がない学振

こんにちは、ひろすけです。

Twitterで学振という単語を久しぶりに見ました。

採択の結果が出る時期でしたね。

申請をしていた大学院生/ポスドクにとっては、

ひとつの分岐点にもなる時期です。

実は私も学振特別研究員だった経歴があります。

結局アカデミアの道は諦めて企業に就職しましたが。

将来アカデミアで食っていくか分からなくても、

学振は申請した方が良いです。

なぜ学振の申請をするべきなのか、

あとは申請のポイントなどもせっかくの機会なので、

記事にまとめようと思います。

時期を逸してしまった感はありますが、

採択された人は少し先の次のグラント申請に、

残念ながら採択されなかった人はリベンジのために

役に立ててもらえれば嬉しいです。

要点

  • 学振の申請はノーリスクなので、出さない理由がない。
  • 申請書を書くという経験は、アカデミアでも企業でも役に立つ。
  • 採択率を上げるために、最低限の下調べと添削依頼は必要。

学振申請のリスク

学振申請にはリスクがありません。

せいぜい他の研究活動にあてていたであろう時間が失われる程度です。

あとは不採用の時のショックぐらいでしょうか。

採択後に得られる対価を考えれば、

適正以下のリスクどころか、ほぼノーリスクです。

採択率も最近は20%前後のようですし、

高すぎる壁ではないでしょう。

チャレンジする価値のあるハードルです。

特にDCの申請であれば業績はほぼ関係ありません。

私が申請していた当時は、

論文0件、学会発表1件の知人も採択されていました。

業績がなくてもチャレンジできます、

申請しない理由はありません。

申請書を書くという経験そのものが役に立つ

アカデミアで生きていくのであれば、

おそらく研究生活中ずっとグラントの獲得のための申請書を書くことになります。

言うまでもなく、その初めの一歩として以降の

アカデミア生活の基礎になるでしょう。

一方、仮に企業で職を得るとしても、

申請書を書いた経験は役に立ちます。

文の論理構成であったり、

見やすい・読みやすい資料を作成できるというのは大きな強みになります。

職業によっては、

企画書や提案書を作成することもあるでしょう。

私自身も提案によって仕事を得る機会があるので、

そういったときには学振の申請書を書いた経験が

とても役に立っていると実感します。

とはいえあくまで基礎としてで、

当時の経験だけでは足りないですし、

様式の違いや業界独特のお作法もあります。

関連本を読んだり、先輩職員に指導を受けたりして、

能力向上に努めています。

アカデミアでいくにしろ、企業で就職するにしろ、

申請書を経験を積んでその能力を獲得しておくことは

間違いなくプラスにはたらきます。

採択率を上げるために

少し話が逸れてしまったので、学振の話に戻ります。

ノーリスクだからといって、

何の戦略もなく臨むのは効率が悪いですし、

時間を浪費することになります。

どこに力を注ぐかを考えておきましょう。

学振の中でもDC1やDC2なら業績よりも申請書をいかに

わかりやすく・見やすく書くかが重要なポイントです。

すぐに業績は増やせませんが、

書き方はすぐに工夫できます。

身近に学振採択者がいれば、

その申請書をもらうのがまずは参考になります。

ただ、参考にしすぎるのはよくありません。

あなたが良いと思ってマネしたことを

採点者が良いと思うとは限らないからです。

自分が申請書を書く時のイメージを

ふくらませるために使う程度が良いでしょう。

また、書き方にはポイントやお作法があるので、

それをきちんと押さえておく必要があります。

そのためには論理立てて説明できるレベルの人がまとめたものが

やはり参考になりますし、投資に見合った対価が必ず得られるでしょう。

経験者に学ぶために本を読む。

良書はたくさんありますが、

目を通しておいた方が良いと思うのは以下です。

狙って獲りにいく!科研費 採択される申請書のまとめ方 [ 中嶋 亮太 ]価格:2,640円
(2022/9/30 05:16時点)
感想(0件)

科研費の申請に特化した本。

私自身も10年前に読んでいれば違った道が拓けていたかもしれません。

今は調べればたいていのことは分かる時代とはいえ、

きちんとした情報を得て整理する時間も馬鹿になりません。

まとまった情報を得るならこのような本に頼る方がコスパが良いです。

伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール [ 高橋 佑磨 ]価格:2,178円
(2022/9/30 05:15時点)
感想(3件)

こちらはもっと広範に、デザインの本です(著者は生態学者)。

これをチラチラ見返しながら作ると、

センスがなくても見栄えのよい資料が作れます。

申請書に限らずパワポの資料やポスターを作るときにも、

ものすごく役に立つので、

早いうちに読んでおくのをお勧めします。

肝心の申請書の中身については、

1人で詰めるのには限界があります。

最低でも指導教官(研究内容を十分に把握している人)に加えて、

もう1人から客観的に意見をもらった方が良いでしょう。

ただ、そのもう1人を選ぶ時に

自分と同じぐらいのレベルの人を選ぶのはうまくありません。

採点者としての経験がありませんし、

修正の方針などが的を射ないコメントになりがちです。

(誤字脱字やレウアウトのチェックならありですが)

ある程度の経験者になんとかお願いして添削してもらうのが良いのですが、

これがハードルが高いかもしれません。

ただ、研究者はたいていグラント獲得に苦労しているからか、

きちんとお願いすれば、快く(お互い様の精神で?)見てくれることが多かったです。

(私の周りには良い人が多かっただけかもしれません)。

とはいえ、いきなりお願いするのは失礼なので、

学会で顔を合わせた時などに研究内容を相談して、

それとなくお願いしておくなど、

関係づくりをしておきましょう。

これは一朝一夕ではできないので地道に。

あとは、あまりに多くの人にコメントを貰うのは個人的にはお勧めしません。

あれもこれもとコメントに対応すると、

特に初心者は収集がつなくなりがちです。

信頼できる少数の人に何度も添削してもらう方が

申請書の出来はよくなると思います。

申請そのものはノーリスクですが、

自分の時間を割く必要があります。

また、添削に協力してくれる人の時間も割くことになります。

スケジュールをきちんと立て、

添削者に失礼のないクオリティに仕上げるのは、

最低限必要なラインだと心得ましょう。

※協力してもらった人には採択/不採択に限らず、

 速やかにお礼を忘れなく!

まとめ

本来は学振申請のタイミングでまとめておくべき記事でした…。

ただ、今年度残念ながら採択されなかった人にとっては、

すでに次回へのスタートが始まっています。

落ち着いたら今回の申請内容を振り返って、

次回はより良い申請書ができるように、

業績を積み上げることも含めて、

戦略を立てましょう。

学振だけがグラントではないですし、

アカデミアだけが生きる道ではないです。

大事なのは採択されたにしろ、

されなかったにしろ、その経験を次に活かすことです。

あの時の選択は間違ってなかったな、

と後々思えるように日々を過ごしていきましょう。

では、また。